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「はい、チーズケーキ」 カチャリという音を立てて、啓大くんがテーブルの上にケーキと紅茶を置いた。 「……ありがとう……」 まさかの自らの墓穴。 私は伏目がちにぺこりと頭を下げてから、半開きの扉の向こうを伺った。 「あ、今日は姉貴たち遅くなるって。 新製品なかなか成功しないとか言ってグロッキーになってた」 「そ、そっか……」 お姉さんたち、いないのか……。 啓大くんと付き合い出してから、幾度となく訪れたこの部屋。 毎回ケーキをご馳走してくれて、その美味しさについつい来る回数も増えていた最近だけど。 今日は、ここに来てから啓大くんの顔が見れない。 なぜか必要以上にギクシャクしてしまう。 「……つかさぁ、そんなに緊張しなくてもいいと思うんだけど。 初めて家に上がったわけじゃねぇんだし」 「!! そ、そうだよね。 ごめん、緊張っていうか、その……」 「なに?」 早くも、啓大くんがイライラしている気がする。 「ううんっ、なんでもないっ!! あのっ、ケーキ! ケーキ食べるねっ!」 2人きりなんていつものことだしっ!! 気にしない、気にしない!! パッと顔を上げると、啓大くんの意外にも穏やかな瞳と目が合った。 「……っ」 「……ぶっ」 突然吹き出した啓大くん。 「……えっ!? ……えっ!?!?」 「なんでもねぇよ。 あーあ、色気より食い気かよ……いつか絶対デブになるな」 「……っっっ!!」 たしかにその通りだけど……! 啓大くんの意地悪は継続中。 だけど、この笑顔に……いつもドキドキさせられる。
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