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「……あの、えっと……と、図書室で……」
自分で喋りながら、あの時のことを思い出して顔が熱くなった。
「……あー……」
啓大くんが今思い出したかのようにそう言う。
「別に。 いつものことだし」
「……」
「拒絶されんの、もう慣れてるし」
半ば諦めたかのようなその表情に、変な不安が押し寄せる。
「啓大く……」
「そんなことより、早く食って勉強……」
「でも……っ」
「でも、何? もういいって」
感情を押し殺した喋り方に、ビクッと身体が小さく震えた。
いざ求められると怖くなるくせに……。
期待されなくなると、今度は別の恐怖が訪れる。
私に、興味なくなった?
もう、こんな女嫌だって思った?
ウジウジしてばかりで、ウザくなった……?
目元に溜まる涙。
気付かれないよう、そっと俯いて拭った。
啓大くんはケーキの残りの一口をパクッと食べると、うーん、と伸びをした。
「確かわかりやすい数学の参考書、リビングにあった気がするから、ちょっととってくる」
ハッと顔を上げると同時に啓大くんは立ち上がり、足早に部屋を出て行ってしまった。
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