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「さ、参考書あった?」
ドキドキを隠しながら平然を装う。
「あった」
啓大くんはローテーブルを挟んだ私の目の前に座ると、さっさと勉強道具を並べ始めた。
「食い終わった? 時間もねぇし、始めるけど」
「う、うん……」
すでにケーキは完食、紅茶も飲み干した。
忘れそうになっていたけど、今日ここにきた目的は数学のお勉強。
慌てて空のお皿やカップをお盆に移して床に置く。
その間にも啓大くんはテキパキと数学の教科書と参考書の共通するページを開いていた。
「……で、最近授業で始まったのはこの辺だけど、花菜はどこがわかんないわけ?」
「あ、えっと……ここと、ここと……あと、ここも……」
「え? いやそれ、ほぼ全部だろ……」
「すみません……」
自分の不出来具合の再確認と啓大くんの言葉に、ちょっと泣きそうになった。
「まぁ、覚悟してたからいいけど。 じゃあわかるように解説するから、どっから手ぇつける?」
啓大くんが伏目がちに教科書を覗き込む。
返事をしようとして、その端正な顔立ちに今更ながら釘付けになった。
……まつ毛……長いなぁ……。
男の子なのに、ずるいなぁ……。
どきん、とまた心臓が高鳴り始めた。
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