1話

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僕は、なんの変哲もない乗用車の後部座席で、1人音楽を聴いていた。 最近人気がある双子のアンドロイドが歌う曲 あまり知られていないマイナーなバンドの曲 好きなアニメのOP曲 数か月前に買ってもらったばかりの携帯のタッチパネルを操作して、音楽の音量を上げる。 運転している母とも、特に話すこともないので、ただぼうっと外を眺めていた。 森と畑しかないような、誰が見ても田舎だと言う場所を延々と走り続けているんだ。 まだ15歳の僕じゃなくたって退屈になるだろう。 その時の僕はきっと、無機質だったと思う。 それくらいあの時間は退屈なものだった。 あまり大きくない森の中に入りかけた時、小さな小屋が見えた。 農具でもしまってあるのかと思ったが、よく見ると意外にも人が住んでいそうな雰囲気の小屋だった。 僕はこんな何にもないところに、こんな小屋をつくる奴なんているのか……、よっぽどの変わり者なのかな? なんて思いながら小屋を見つめていた。 小屋を通り過ぎると、小屋から少し離れたところに人がいるのが見えた。 それは2人の男女のようだった。 小屋の持ち主はあの人たちなのかな?、僕はその程度にしか思っていなかったが、なんとなく2人が気になったので目で追ってみることにした。 2人は何か話しているようだったが、内容はもちろん聞こえない。 喧嘩でもしているのだろうかと思ったとき、女が男の首を絞め始めた。 あ、やっぱり喧嘩してたんだ。 僕は心の中でそうつぶやいた。 男の顔が苦しみで歪む。 女の顔が怒りと憎しみで満ちているように見える。 男が浮気でもしたか、それとも金のトラブルか……。 そんなことを考えていると、小屋と男女は見えなくなった。 結局なんだったんだろうな、僕には関係ないけど。 ……、僕はまた退屈になってしまった。 なんとなくポケットから携帯を取り出し、ヴィジュアル系バンドの曲を流した。 曲名は、「大嘘つき」 僕の大好きな曲だ。 そして、また窓の外を眺める。 すると1羽の鴉が畑を歩いてるのが見えた。 翼があるんだから飛べばいいにの……。 あの男、死んだのかな? まったく、世の中ってのは平凡で退屈だな。
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