3話

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僕は声が出ない。 僕は話せない。 …………ぼくは、うごけない。 生まれつき体が弱かった僕は、いつもあいつと二人きりだった。 家にいる時も、幼稚園や学校にいるときも。 他の人は僕に近づこうともしなかった。 僕にはあいつだけだったし、あいつも僕だけだった。 「はるちゃん」 あいつは僕をそう呼んでる。 僕の名前が海晴(みはる)だから。 「どうしたの?ゆうちゃん」 僕はいつもこう返事をする。 あいつの名前が優希(ゆうき)だから。 僕はなにも不満はなかった、友達だったし信頼してたから。 あいつが僕をどう思っていたのかわからないけど…。 それでも僕はあいつが好きだった。 「はるちゃん」 「どうしたの?ゆうちゃん」 「なにしてあそぼっか」 「ゆうちゃんのすきなあそびでいいよ」 「じゃあ、しゃぼんだましようよ」 「うん、しゃぼんだましよう」 「はるちゃんみてみて!」 「わぁ…」 「あのしゃぼんだま、ぼくたちみたいだね!」 庭のベンチに二人で並んで腰かけて、しゃぼん液をこぼさないように気を付けながら遊んだあの時。 あの時のしゃぼんだまは、本当に不思議で僕たちみたいに見えたのを、よく覚えている。 ……小さな二つのしゃぼんだまが寄り添ってくるくるまわっていたんだ。 僕とゆうちゃんのしゃぼんだま。
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