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あれから僕らは、よくしゃぼんだまをするようになった。
僕と違って、どこまでも高く飛んでいくしゃぼんだまが、羨ましかった。
でも、僕が飛ばすしゃぼんだまはいつも、どこか寂しげだったのも覚えている…。
大好きなゆうちゃん。
遠くに行っちゃったゆうちゃん。
僕のせいで、いなくなっちゃったゆうちゃん。
「はるちゃんっ」
「はーるーちゃん」
「…はるちゃん?」
やめて、僕を呼ばないで。
ごめんね……ゆうちゃん。
最後にゆうちゃんを見たのは、もう何年も前。
いつもみたいに遊んでいた僕たちは、あの日僕の提案で公園に出かけた。
そこで犬に出会ったんだ。
飼い主がリードを外して遊ばせていた犬。
その犬に近づいた僕は、…噛まれてしまった。
手をかまれてしまって血がたくさん出た。
それを見たゆうちゃんが、僕を助けようと近づいてきたんだ。
そしたら犬は、僕から離れてゆうちゃんの腕を噛んだ。
ゆうちゃんは、血が止まらない病気だった。
僕よりもたくさん血が出てた、地面が赤くなるくらいに。
犬の飼い主が救急車を呼んで、僕らは病院に運ばれたらしい。
僕は手術をして助かった。
でも。ゆうちゃんは……手術をしても助からなかった。
僕が公園に行こうなんて言ったから。
犬に近づいたから。
ゆうちゃんはいなくなっちゃったんだ。
だから、僕はもう外には行かない。
外には行けない。
あの時のショックで、僕は話せなくなってしまったし、足も動かなくなってしまった。
手は動くから、医者や家族とはメモ帳を使って話している。
僕の部屋の窓は庭に面していて、いつも並んで座ったベンチが良く見える。
時々、あの頃の僕たちがいるような気がしてならない。
その度に、僕とゆうちゃんのしゃぼんだまを思い出す。
ゆうちゃんと一緒に遊んだしゃぼんだま。
ゆうちゃんが好きだったしゃぼんだま。
何も忘れないように、僕は毎日しゃぼんだまをする。
あの時のしゃぼんだまは二度と見れないと分かっているけど。
それでも僕は、あのときと同じしゃぼんだまを待っている…。
3話-END-
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