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………神様はどうも悪戯がお好きなようだ。
もう吹雪で前が見えない。
これは……歩いて帰れるレベルではないな。
とりあえずクラスだけは確認しにいかなくては………。
…………あぁ、神よ、悪戯にも限度がありますよ。
昇降口に貼られているはずの表が雨と雪で字が滲み、強風で数枚破けて吹き飛んでしまっている。
どうせもう濡れているのだからこのまま帰っても問題はないな。
と、自棄になりながら親の知り合いだという家へ駆け出した。
「いらっしゃい、久しぶりだねぇ、リディアちゃん」
「お久しゅうございます、相澤殿」
「リディアちゃん、誰にその日本語を教えてもらったの?……まぁいいや。寒いでしょ、お風呂沸かしておいてあげるから早く体を拭いてきなよ」
「Thank you」
相澤と書かれた家のチャイムを鳴らすと、短く切り揃えられた黒髪の男性が出てきて家に迎え入れてくれたが、私はこの人に見覚えがない。
この人は私のことを知っているようなことを言っているが、パパに何か聞かされているのだろうか。
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