お前の名前は

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ふと顔を上げると、もう既に二人の神姫マスターが台を挟んで向かい合っていた。 一人はさっきモニターに映っていた男。もう一人は長いポニーテールの女だった。 対戦台の上にお互いの神姫が降り立ち、小さな円形の台座にのる。すると台座がゆっくりと降下し台の中に吸い込まれていった。 神姫マスター達もバイザーを身に付け椅子に座る。 ……人間の脳と神姫の心、つまりCSCを繋ぐなんてにわかには信じがたい話だ。バーチャルリアリティってすげぇ。 対戦台の上空に多数のモニターが現れる。映っているのはお互いの神姫。だがもちろんこれもバーチャルだ。陽輔の話ではリアルバトルも不可能ではないらしいが、そもそもリアルバトル用の台が存在するのかどうかも怪しい限りだ。 そんなことを考えていたら戦闘が開始された。 勝負は一瞬でついた。 ポニーテールの女の方……黒い神姫が音も無く消え、直後男の神姫の背後に現れ、背負った太刀で胴薙ぎに一閃。 それで終わった。 ようやく試合終了のブザーが鳴った。 「な……」 「うわー、容赦ねぇな」 「…………」 「ん、どした?」 「か……」 「か?」 「カッケェ……」 「……はぁ?」 昨日陽輔にはああ言ったがこの試合を見て揺れるどころか振り切れた。 さっきから病人を見るような目でこちらを見ている男に尋ねた。 「なぁ、神姫っていくらぐらいするんだ?」 「あぁ……安いライトアーマーなら5万、新型とかだと12万ぐらいだったっけな?」 いける。 「……ちょっと買ってくる」 「え、ちょ……おい!?」 男の制止を無視して俺は銀行へと走った。 俺の唯一の趣味が金をほとんど使わない機械いじりだったので貯金はそれなりに貯まっていた。 ……まぁそれでも12万はかなり痛いんだが。 ATMから12万を引き出し、近くのホビーショップへと向かった。
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