お前の名前は

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五分ほど歩き、目的地に着いた。 ホビーショップ・ヒサカタ 若干寂れてはいるが中に人が居るとこはよく見かける変わった店だ。 引き戸を引っ張るとカラカラと鐘が鳴った。 「いらっしゃ~い」 奥から店主と思われる男の声が聴こえてきた。 辺りは高い棚が数多く設置されており、目的の棚をすぐに見つけることは出来なかった。 「すいませーん」 「ん、何か用かな?」 カウンターに座って本を読んでいた店主が顔をあげる。 「あー、えーと」 「?」 「ぶ、武装神姫って……何処に置いてますか……?」 店主の男が察したようにニヤリと顔を歪めた。 「あぁ、成る程。神姫ならすぐ右の棚に置いてあるよ」 「え、あぁ、ありがとうございます……」 陽輔が俺や犬飼をあれほど誘っていた理由がよく分かった。 なんというか……自分の性癖を覗かれているみたいでかなり恥ずい。 まぁ、何はともあれ場所が分かったなら後は選んで買うだけだ。 目的の物は…… あった。 棚の真ん中に一つだけ置かれていた。 あの黒い神姫…… ストラーフMk2と言う神姫らしい。 基本武装や周辺機器も同梱されており、価格は10万とんで5千。 「……君は運が良いねぇ」 「はい?」 カウンターに神姫が入った箱を持っていくと店主が話かけてきた。 「うん?知らないのかい?」 「何がです?」 「そのストラーフMk2型はベストセラー神姫の一つでね、今朝入荷したばかりなんだ。次の入荷はいつになることやら……」 「そうなんですか?」 「あぁ」 今はまだ5時前だ。 人があまり通らない道の寂れたホビーショップ、そこに今朝入荷して今俺が買おうとしているのが最後の一つ。おまけに次の入荷は分からない。 ここまで来て買わない手は無かった。 「……これ下さい」 「まいどあり」 店主の男は手早く茶色い紙袋の中に神姫を入れ、俺に手渡してきた。 「ありがとうございました」 「大切にしなよ~」 店を後にする俺の背中に間延びした店主の声が届いた。 「……帰るか」 夕飯の買い出しに行くにも重い荷物を抱えながら買い物に行く気は起きなかった。 家への帰り道、まだ眠っている『彼女』の名前を思い付いた。 こいつの名前は……ネロだ。
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