~1章~ 不幸の獅子と最強の乙女

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そして玄関に直行。素早く靴を履いて立ち上がる。霄に 「今何時だー?」 と尋ねる。既に場所を移していた宵が 「8時15分くらいよ~」 と答えた。 つまり、タイムリミットまであと三百秒。 「…まぁ、行けるかな」 俺は、疾風の如く駆け出した。 それから高校にたどり着くことが出来たのが二百八十秒後。 更にクラスを見て自分の名前を確認するのに十秒。 そして教室に突っ込むまでに十秒。 占めて三百秒。なんとか間に合ったようだ。 始業式当日に遅刻するという(去年のような)失敗を犯すことは免れた。 周囲の視線が妙に冷たいのは気のせいだろう。うん。きっとそうだ。 俺はそう割り切って自分の席についた。 その後は始業式、ホームルームと共に滞りなく終わり(担任が「遅刻などしないように…」とか言う話題を振った瞬間大量の視線を浴びた気もするが)、時刻は放課後。俺はふてくされつつ家に帰宅中だ。 「別に好きで遅刻してる訳じゃ無いっての…」 とか言って歩いている、その時だった。 「っ!!」 俺は立ち止まった。感じる。 「…」 殺気だ。やはり今日はとことんついていない。 「すぅ~…はぁ~…」 大きく深呼吸し、思いきって振り返った。 「ぐはぁぁ!?」 そして、程なく吹っ飛ばされた。 コンクリートの地面に叩きつけられ、声も出せずに悶える。 しかしどういう事かはわかっていた。どっかの馬鹿が飛び蹴りをくらわせたのだ。 俺にこんなことをするのはアイツしかいない。 やっとのことで立ち上がった俺は、その馬鹿の方を向いた。 「よっ!葉ぁ月!」 さっきのことはどこ吹く風、と言っているかの様な声がかけられた。 俺はげんなりしつつ、 「やっぱりお前か、浅葱…」 そう言って前方に立っている幼なじみ、雛蕗浅葱を見る。 横の上部(簡単に言うとサイドテール)にまとめられた髪は橙色で、澄んだ紫色の瞳は落ち着きがある…筈なのだが、コイツは落ち着きなんて言葉とは一京光年くらいかけ離れている。何せ中身が記念物に指定されそうな程の天然だ。
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