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そして玄関に直行。素早く靴を履いて立ち上がる。霄に
「今何時だー?」
と尋ねる。既に場所を移していた宵が
「8時15分くらいよ~」
と答えた。
つまり、タイムリミットまであと三百秒。
「…まぁ、行けるかな」
俺は、疾風の如く駆け出した。
それから高校にたどり着くことが出来たのが二百八十秒後。
更にクラスを見て自分の名前を確認するのに十秒。
そして教室に突っ込むまでに十秒。
占めて三百秒。なんとか間に合ったようだ。
始業式当日に遅刻するという(去年のような)失敗を犯すことは免れた。
周囲の視線が妙に冷たいのは気のせいだろう。うん。きっとそうだ。
俺はそう割り切って自分の席についた。
その後は始業式、ホームルームと共に滞りなく終わり(担任が「遅刻などしないように…」とか言う話題を振った瞬間大量の視線を浴びた気もするが)、時刻は放課後。俺はふてくされつつ家に帰宅中だ。
「別に好きで遅刻してる訳じゃ無いっての…」
とか言って歩いている、その時だった。
「っ!!」
俺は立ち止まった。感じる。
「…」
殺気だ。やはり今日はとことんついていない。
「すぅ~…はぁ~…」
大きく深呼吸し、思いきって振り返った。
「ぐはぁぁ!?」
そして、程なく吹っ飛ばされた。
コンクリートの地面に叩きつけられ、声も出せずに悶える。
しかしどういう事かはわかっていた。どっかの馬鹿が飛び蹴りをくらわせたのだ。
俺にこんなことをするのはアイツしかいない。
やっとのことで立ち上がった俺は、その馬鹿の方を向いた。
「よっ!葉ぁ月!」
さっきのことはどこ吹く風、と言っているかの様な声がかけられた。
俺はげんなりしつつ、
「やっぱりお前か、浅葱…」
そう言って前方に立っている幼なじみ、雛蕗浅葱を見る。
横の上部(簡単に言うとサイドテール)にまとめられた髪は橙色で、澄んだ紫色の瞳は落ち着きがある…筈なのだが、コイツは落ち着きなんて言葉とは一京光年くらいかけ離れている。何せ中身が記念物に指定されそうな程の天然だ。
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