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「暑ぃ~……」
後ろの方からロドのだれきった声がするが、ラピスは気にせず先を急いだ。
世界の背骨を降り、はや一週間。辺りはいまだひび割れた地面と岩しかみえなかった。
陽射しも強く、日中に歩くのは自殺行為に等しかった。やむなく一行は昼間は陽射しを避けて夕刻から明け方にかけて歩を進めていた。
「なぁ、本当にこの先に水があるのか?」
ロドが声を掛けてくるが、ラピスはそれに答えようともしない。やがて諦めたのか、ロドも黙って歩くようになり一行は黙々と歩き続けた。
そう、緑多い北部と違い南部では水の補充が簡単にはできなかったのだ。
雨は降らない、河は干上がっている。植物すら見当たらない。空気ですらカラッカラである。
ラピスも水の大切さは重々承知している。しかし、南部の乾燥具合は想像以上であった。加えてロドの存在である。
(……はぁ)
内心幾度となくため息をついただろうか。
旅慣れていないロドは経験のない暑さと渇きにひっきりなしに水を飲んでしまったのだ。途中から節約させたが時すでに遅く、手持ちの水は底を尽きかけていたのだった。
そんな万事行き詰まった時に出たレオの一言。
「この先に湿気を感じるにゃ」
その言葉を頼りにラピスは日が上ったにも関わらず強行軍をとっているのだった。
ナニカ イル
「え、本当ですか!?」
シラナイの言葉にラピスは歓喜の響きの混じった声をあげる。
シラナイは基本的に実直である。レオのように平気で嘘をついたり騙したり、はぐらかしたりしない。
そのシラナイの言葉であれば信憑性は高い。「ナニカ」というところに若干引っ掛かりを感じるが、生き物がいるのであれば水もあるだろう。
逸る気持ちを抑えつつ、一行はシラナイに導かれるままに岩原を歩いていった。
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