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「……ん~、イヤな空気だにゃ~」
肩の上のレオが鼻をヒクヒクさせながら呟く。ラピスはなにも感じないが「天使様は色々と普通じゃないからなぁ」と思い直し、一応尋ねてみることにした。
「なにがイヤなんですか?」
「……砂っぽいし、鉄の匂いがするにゃ。それに生臭いにゃ」
「なんですか、それは」と言葉少なに聞き返すラピスに、レオは丁寧に答えた。
「具体的に言えば何か争いがあったようだにゃ。ここから風上に1キロくらいかにゃ?
かなりの生き物が犠牲になってると思われる……にゃ?」
突然走り出したラピスの肩から振り落とされるレオ。
つられて後を追うロドの後ろ姿を見ながら、やれやれと伸びをする。
「なにも好んで厄介事に首を突っ込むこともなかろうににゃあ」
心底面倒そうな顔をしながら、レオは光輝く羽を纏い大空へと舞い上がった。
「ラピス、どうした!?」
「この先に、何かが争って、かなりの犠牲があるって!」
「本当か?」
「天使様は、嘘は言いますし、イタズラもしますが、悪趣味な冗談は、言わない、と思います」
そうこうしていると、生臭い匂いが二人の鼻をついた。二週間前に鹿を屠ったときに感じたの時とは違う、生き物に対する敬意の感じられない、虐殺を思い起こさせる荒々しさを感じさせる臭いだった。
「ウッ……」
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