【 洞 窟 】

2/49
1678人が本棚に入れています
本棚に追加
/806ページ
「しかし、見事になんにもないにゃ」 「そうですね。僕の持ち物は全部なくなっちゃいましたね」 広大な森を見下ろせる丘の上で、青い髪の少年は自分の身体を見下ろした。 動きやすい木綿のチュニックとズボンは、薄汚れて所々破けている。特に背中の部分は襟から縦に裂けていた。 あとは皮張りのブーツを履いているだけで至って軽装である。荷物もなにも持ってない。 森の中にいるにしては恐ろしく身軽な格好をしていた。 「本当になにもない……その前にこの格好じゃ夜になったら寒いな……」 独り言のように呟いた言葉に答えたのは足元にいた猫だった。 「まあ、なんとかなるにゃあ~」 その声に反応した少年が足元を見ると、グレーの毛並みをした猫が少年を見上げていた。 その黒色の瞳が悪戯っ子のように輝いている。
/806ページ

最初のコメントを投稿しよう!