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「しかし、見事になんにもないにゃ」
「そうですね。僕の持ち物は全部なくなっちゃいましたね」
広大な森を見下ろせる丘の上で、青い髪の少年は自分の身体を見下ろした。
動きやすい木綿のチュニックとズボンは、薄汚れて所々破けている。特に背中の部分は襟から縦に裂けていた。
あとは皮張りのブーツを履いているだけで至って軽装である。荷物もなにも持ってない。
森の中にいるにしては恐ろしく身軽な格好をしていた。
「本当になにもない……その前にこの格好じゃ夜になったら寒いな……」
独り言のように呟いた言葉に答えたのは足元にいた猫だった。
「まあ、なんとかなるにゃあ~」
その声に反応した少年が足元を見ると、グレーの毛並みをした猫が少年を見上げていた。
その黒色の瞳が悪戯っ子のように輝いている。
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