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「証拠は?」
「はぁ? どー見たって奴が絡んでるのは間違いねぇだろうが!」
「ないか。憶測や推測で動くことはできないな」
「っかぁ~、なんでそう頭が固ぇのかなぁ。だったら俺一人でも行くぜ」
ロベルトの慎重な態度に、チルは苛々と頭を掻きながら我慢ならないとばかりに岩の上から立ち上がった。
「待て、誰も行かないとは言ってない」
「はぁ? お前今動くことはできないって言ったじゃねぇか」
「だから早合点するなと言うのだ。奴らをどうするかは別として、疑わしいのは事実だ。引き続き奴らを監視して尻尾を掴む」
「……相変わらずまだるっこいなぁ。んなもん取っ捕まえてから見つけりゃいいじゃねぇかよ」
「君こそ相変わらずの脳筋だな」
「……んだと?」
「いいか、仮に奴らがやっているとして、奴らにどうやって近づくのだ?」
「どうって、そりゃ……」
そこまで言って口ごもる。目線は砦にいく道に注がれている。
「迂闊に近づけば君もバラバラだぞ?」
「う……じゃ、じゃあお前はどうするつもりなんだよ」
「正直困っている。この不可思議な現象は何も分からない現状では防ぐ手段もない」
「なんだよ、偉そうなこと言っといて。お前も打つ手なしなんじゃねぇか」
ほれみろとばかりに嘲笑うチルにロベルトは淡々と話をする。
「いや、打つ手はあるぞ。君はなかったのか?」
「……え?」
「まさかと思うが、作戦もなく砦にいこうと?」
「あー、うー……」
「それに、仮に彼らの仕業として、その仕組みを知らなければ最悪の場合もとに戻せない恐れもある。そのような事態は是が非でも避けなければならない」
「…………」
いつものように正論で論破され、気落ちするチル。しかし同時に「自分がやらなければ」という気負いが少しずつ消えていく。
どれも少し冷静になれば分かることだ。
「だがよぉ、あの現象のことをどうやって調べるってぇんだよ。俺たちゃ学者でもなけりゃ魔法使いでもねぇんだぞ?」
「うむ、だからその件については専門家に任せようと思う」
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