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景竜は、
「本庄殿。なんで俺の家臣に立候補してくれたんですか。」
実乃は、
「若殿様、私の事は実乃とお呼び下さいませ。そして私はあなた様の家臣。私めなどに敬語などお使いになりますな。」
景竜は、
「あっあっそっそうだよな。では改めて、実乃。何故俺の家臣に立候補したのだ。」
実乃は、
「先程も申しましたが、私は御館様が栃尾城にて春景様にお仕えなさっていた頃より、御館様のお力の素晴らしさに圧倒され、春景様ではなく長尾景虎様にお仕え申し上げておりました。
長尾景虎様が現在の御館様の地位に就くまで、私はこの城にて精進なさっていた御館様をよく見ておりました。故にまた此度、新たな御館様になられるであろうお方であるあなた様に仕えたく思ったのでございます。」
景竜は、なるほどと思い、
「ありがたいな。これからよろしく頼むよ。」
実乃は頷き、
「この実乃めの命は若殿様に捧げまする。」
景竜は実乃が家臣になってくれて心から嬉しかった。
実乃は、武功に優れている上、知能も高く、さらには忠誠心が誰よりも強い。
家臣にこれほど信頼のおける者はそういないだろう。
突然、それまで黙っていた銀次郎が、
「若殿様、私から是非お伝えしたい話があります。」
景竜は、
「なんだ?」
銀次郎は、
「此度の北条戦に兄上を連れていかないで欲しいのでございます。」
景竜は驚く。
「どうして。」
銀次郎は、
「兄上は北条家との間に大きな問題を抱えていらっしゃいます。もし兄上が北条戦に参加なさったら、間違いなく討ち死になさるおつもりなのです。」
景竜は、
「金次郎、銀次郎の言う事は本当なのか? 」
金次郎は首をふる。
「いーや、嘘じゃな。わしは北条家などと関係はないしまだまだ現役。死ぬつもりなんぞ少しもないわ。」
銀次郎は負けじと、
「兄上が仰っていることは全て偽りです。若殿様。何卒、何卒お願い致します。」
景竜は少し間をおいた後、
「これは、本人の問題であり、俺たち外部が決めるものじゃない。本人が北条戦に出ることを望んでるんだから俺は止められない。」
金次郎は、
「さすが若殿。恩に着るぞ。」
銀次郎は複雑な表情を浮かべていた。
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