決戦

8/48
前へ
/338ページ
次へ
景竜は黙って聞いている。 銀次郎は、 「北条氏康は桂林の方を武田家へ戦略結婚させようとしていました。しかし、兄上がその桂林の方を奪ってしまったので、北条氏康は大変困ってしまいました。氏康にはそうは言っても、代わりの娘が何人かいたので最初はあまり、兄上を咎めたりしませんでした。しかし……奴らが動いたんです。」 「奴ら…?」 「元は我々一族に服属していた北条家の忍、風間家です。風間家は始めは兄上を大変尊敬し、従順しておりましたが、現在の風間家頭首、雷太郎殿が風間家をついだときにそれは崩れていきました。雷太郎は我々の忍一族から独立し、願わくば我々一族を滅ぼそうと考えたのです。雷太郎が頭首となる、ちょうど少し前に兄上は忍としての地位を捨て京へと向かわれた事もあり、風間家は我々一族から少し離反の意思が見られていました。それを好機とし、雷太郎は我々からの離反を正式に発表し、しかも我々を滅ぼすために北条に我々の悪い噂を流し始めました。 手始めに雷太郎が流したのは、兄上が奪ったのにも関わらず、桂林の方は酷い扱いを受けた上、兄上に殺されたというものでした。 勿論、その噂は偽りで、桂林の方は亡くなったりしていません。 そこで兄上と桂林の方は直接氏康に会い、偽りだという事を伝えるため小田原城に帰る事にしました。しかし、全ては雷太郎の罠でした。噂を嘘であると氏康に伝えるため、必ず小田原城に兄上と桂林の方は通ると踏んでいた雷太郎は、 風間一族を率い、二人を待ち伏せしていました。兄上は必死に一人で戦いました。兄上は歴代最強の忍。なかなか倒されはしませんでした。だから雷太郎は、桂林の方を人質にとりました。桂林の方を人質にとられた兄上は戦う事ができなくなってしまいました。そして兄上は風間一族に捕まってしまいました。しかも、雷太郎によって汚名を着せられ、罪人として兄上は氏康に会う事にさせられました。兄上は氏康から真実を話すように言われました。しかし桂林の方を人質にとられているため、兄上は風間に従う他なく、桂林の方を殺したと氏康に告げてしまいました。」
/338ページ

最初のコメントを投稿しよう!

916人が本棚に入れています
本棚に追加