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景竜は怒りを露わにし、
「なんて酷い奴なんだ。風間雷太郎は…。」
銀次郎は続ける。
「それだけでも十分酷いのに、雷太郎は兄上を苦しめる事をやめませんでした。」
景竜は、
「まだ何か……。」
銀次郎は、
「兄上は勿論死罪となりました。兄上もきっと氏康に会う事になれば、そうなると悟っていたはずです。しかしなんと雷太郎はそれを望まなかった。あろうことか、雷太郎は必死に兄上の助命を請いました。」
景竜は驚く。
「なんでそんなこと……。雷太郎は金次郎を殺したかったんじゃ……」
銀次郎はさらに憎しみに満ちた表情を浮かべ、
「雷太郎は、兄上を殺さずに生き地獄を味合わせたかったんです。雷太郎は何故か兄上に特別な思いを抱いていた。恐らくは嫉妬……。
兄上は雷太郎のおかげで氏康から許されました。兄上は雷太郎に何故自分を助けたのか問いました。
すると雷太郎は、『お前への復讐は終わった。人質を解放してやる』と言いました。兄上は助命してもらったのもあって、すっかり雷太郎の言葉を信じてしまいました。その言葉が兄上の人生を大きく変えるとも知らずに。兄上は桂林の方が捕らえられていた、雷太郎の屋敷の牢屋に行きました。そこで兄上と桂林の方は涙ながらの再会を果たしました。しかし、それは一瞬の幸せにすぎなかった。鍵を開けると言って、雷太郎は桂林の方に近づき、兄上の前で桂林の方を斬り殺したのです。あまりに一瞬だったため兄上はなにもできませんでした。そして兄上は我を失われました。気づけば雷太郎以外の風間一族は皆、死んでいました。憎き雷太郎は部下に守られ逃げ出していたのです。死神と成り果てた兄上を桂林の方は許せなかったのでしょう。消え失せて行く意識の中、桂林の方は言ったのです。『あなたは、私の分まで生きて、人を殺すのではなく守る忍になって欲しい』と。兄上はその言葉に我を取り戻し、桂林の方を抱きしめ泣き続けました。そして誓われたのです。自分は自分の罪を償うために人を守り続けると。しかしもう一度人を殺さなければならなくなれば……自分は死ぬと。」
景竜は怒りで身体が震えていた。
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