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「俺は絶対金次郎を助けるよ。」
一方、栃尾城から出てそのまま、金次郎は一人の家来を連れて海に来ていた。
金次郎は海に向かって、
「桂林。わしはもうすぐ、やっとお主の所へ行ける。しかもお主の無念を晴らしてからのう。」
金次郎の目からは涙が流れていた。
「桂林。わしはお主に会いたい。本当はすぐにでもお主の所へ参りたかったのじゃが、お主が死ぬ間際であんなことを言いおるからわしは生きなければならなくなったんじゃ。まったく。お主は意地悪な女よ。」
家来は黙っていたが、
「金次郎様……。」
金次郎は家来の方を向き、
「お主に頼みたいことがある。」
家来は、
「なんでしょうか。」
金次郎は、
「わしはどのように死ぬかわからん。理想は自害じゃがそう上手くゆかぬものじゃ。もし、わしが北条……いや……風間に討たれるようなことがあれば、わしの首はなんとしても守って欲しいんじゃ。桂林のもとへ行った時に首が無かったら情けなくて桂林に嫌われてしまうからのう。それと、わしを桂林と同じ墓にいれて欲しい。お主には昔、桂林の墓を教えたよのう。」
家来は頷き、
「ええ。存じております。しかし金次郎様。貴方はこの戦で死ぬべきでは…………「楽にさせてくれと、この間も言うたじゃろう。風間による生き地獄にはもう耐えられんじゃよ。」
金次郎の目はもう覚悟が決められているようだった。
家来は涙を堪えながら、
「この、金之助なんとしてもその任務を果たします。」
金次郎は微笑み、
「頼んだぞ。金之助。わしから『金』の一字を名としてもらったんじゃからのう。それに恥じない仕事を期待しておるぞ。」
「はっ。」
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