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「まあ、家臣が俺を疑うのも当然か……。」
「もし、良い芸ができぬようなことがあれば、竜也殿は越後から追放されるそうです。」
越後から追放ーー。
戦国の乱世の中でなんとか生きていけそうな準備が整ってきたのに、追放されたらたまったものではない。
「今すぐに……なんだよな?」
銀次郎は深く頷く。
そして、
「竜也殿。恐れながら申し上げます。私のような者が申し上げるのは、大変ご無礼承知にてございます。しかし、私は竜也殿と5日間一緒にいさせていただいたのに、どうしても、竜也殿の特別な力というものがわかりませぬ。だから、もし、特別な力なるものが本当はないのでありましたら、正直に景虎様に申し上げるのが良いかと。」
銀次郎は真面目にそう語った。
竜也は少し驚いた。
自分の事を気にかけていてくれたからだ。
「大丈夫だ。銀次郎。なんならお前も俺の芸を城で見ろ。お前を安心させてやる。」
「まことですか。」
「ああ。」
銀次郎は自信を持ってそう答えた竜也の様子に、少し緊張が和らぎ、
「ならば参りましょう。期待しておりますよ。」
そして二人は急いで春日山城に向かった。
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