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「恐ろしい兵器だ……。」
長尾軍は皆、大砲の恐ろしさにびっくりしてしまっていた。
もちろん武田軍はさらに驚いていて、
「なんだあの飛び道具は!景虎め。卑怯な真似をしおる。騎馬隊出陣じゃ!卑怯者景虎めに痛い目を合わせてしまえ!」
晴信の合図に従い、武田の騎馬隊が一斉に長尾軍に攻めてくる。
こうなると竜也が用意した性能のいい大砲とはいえ、撃つまでに時間が掛かるという点で不利である。銃は未来の性能の良いものであるため、連射発砲でさえ可能だ。
そこで景虎は、
「大砲隊は下がれ!そして銃を持つ兵は上がって、武田の騎馬隊を撃ち落とせ!刀の兵はもうすぐ出番だ。控えていろ!」
竜也は景虎の才能に驚いた。簡単に武器について説明したが一度も使ったことも、目にしたこもない武器のメリット、デメリットをきちんと理解し采配をしているのだ。
武田の騎馬隊はみるみるうちに崩壊していく。
景虎は、
「とどめに出るぞ。私に続け!」
自ら刀の兵を率いて武田軍に突っ込んでいった。
竜也は陣中から出ることは断った。
どうしても自らの手で人を殺す決意ができなかったからだ。
直接ではないにせよ、間接的には沢山人を殺したのも事実だが、目の前で人が死ぬのは耐えきれないのだ。
一人静かに陣中に座っていると、
「竜也殿。」
どこかから先程の忍が現れる。
「忍か。戦況はどうだ?」
忍は即答する。
「我々の勝利は間違いありませぬ。」
竜也はふと気づく。
「お前の声。どこかで聞いたことあるな。」
声が誰かににていると思ったのだ。
「はい。私は銀次郎です。」
忍は竜也に顔を見せる。
確かに銀次郎だった。
「銀次郎!?いないと思ったら……。お前俺の側近なんだよな。」
銀次郎は、
「申し訳ありません。私は確かに竜也殿の側近もしておりますが一番の仕事は景虎様の忍。景虎様が越後を統一なさる前から私は忍として精進して参りました。」
銀次郎の言葉に違和感を感じる。
「おいっ。確か景虎様は俺と同じ、入りたてのやつを側近にしてくれたんじゃ……」
銀次郎は申し訳ないような表情に変わり、
「嘘をついておりました。申し訳ありませぬ。」
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