「    .」

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けれど 気にする事もなく 水の揺れと戯れる 「怖いの?」 聞かれた声に耳を塞ぐ 受け入れれば 触れてしまえば また哀しいから 溢れ続ける憂い水に けれど その子は立ち続けた 「こんなに   冷たくて淋しくなぁい?」 独りは淋しい 「だったら…」 けれど 誰かと一緒にいたなら その温もりを喰らってしまうから そう為るように 生まれてしまったから 「………じゃあ、君は?」 ……… 「君にも温もりはあるでしょ?」 そう その子は脚に触れる 触れる間際に思うは ダメだと拒絶 温かさが肌に伝わる 触れたなら求める欲 “トクン”   何かが鎌首をもたげる “ざわり”     “ざわり” 粟立つ焦り 温もりが欲しくなる 冷えた心に 我が身に 飢えがその子の首に掛かり 根を張る 蔦を絡める  
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