「    .」

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仄かに 少しずつ 熱を帯びる心と身体 隅へ追いやっていた渇きが 表へでて 潤いを含んでゆく 満たされる杯 意識を酔わすは その者のぬくもり温かさ…‥ “こうやって、あの子も…” 自分の中に声が響く 気付けば目の前に もう見たくなかった嫌な光景 真っ直ぐ絡む その瞳 何を云いたいのか わからない視線 何かを含んで けれど その瞳でさえも 絡まれ遮られ包まれ 「ー―っ!」 瞬間、 自身が蝕んでるそれを… その子を突き飛ばした 絡んだものが離れ 勢い良く倒れ 水が驚き声をあげる 咳込みながら身を起こす その子は少し苦しそうに けれど薄く笑ってもいた そんな表情を見た瞬間 何か湧き上がるような 吸い込まれるような 「……どう…して…どうして!」 “どうして抵抗しなかった” “抗えたはずなのに” そんな言葉さえ 遮られ飲み込まれ 最後まで口に出せなかった 喉が震えている 言葉を詰まらせてると 声を投げられる 「今、どうして放したの?」  
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