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「珍いね
こんなところに人間がいる」
声の主は
見えなかった
いえ 声の主どころか
全てが見えなかった
明かりが無い
嫌いな影も無い
時折 撫でてく風が
落ちてくる葉が
わたしが そこにいる事を
忘れさせない
「ねぇ 聞こえてる?」
また声を掛けられた
相手がいるであろう所に
顔を向ける
被さっていた葉が落ちた
「どうしたの?」
声からして同じ歳くらいの
男の子だろうか
聞き覚えは無い声だった
「…もしかして 見えない?」
俯きながら肯定した
“迷って 出られなくてー…”
「…ああ、迷子なんだね」
珍しい そう言って
「かえりたい?」
“………”
わからない
だから応えようがない
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