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けれど、のめり込むような事は当然なかった。
成績を落とす訳にもいかなかったし、家庭教師の彼女の事が常に頭の隅の方にあったからやっぱり恐怖心が離れなかったんだ。
父親の血を引いているとなれば尚更。
そんな俺でも3年間成績も落とさず、楽しく学生生活を送れたのは友人や先生、寮長に恵まれたからだなと思う。
当然の事ながら高校時代一度も家には帰らなかった。
長期の休みはバイトをして過ごした。
大学にもそのまま進んだ。
しっかり勉強をして学費を相変わらず免除してもらっていたし、安いアパートを見付けてバイト費だけで生活できるようにした。
その頃には女の子とうわべだけで付き合う事に罪悪感は無くなっていた。
段々、感覚は麻痺していたのかな。
そんな俺に近寄ってくるのは、やっぱり少し軽い感じの女の子達で。
始まりも終わりさえも曖昧な付き合いばかり繰り返していた。
言い訳になるけれど、今思うと淋しかったのかもしれない。
高校の時も大学時代も、周りのみんなには帰る家があった。
家族がいた。
甘えられる場所があった。
高校時代も長期の休みに実家に帰らないのは俺くらいだった。
俺には帰れる家なんてなかったから。
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