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「どうだ、奴隷扱いされた気分は?」
ひんやりした鋼鉄製の首輪をライアスの細い首に嵌めて、帝王は首輪についた鎖をこれみよがしに顔の高さにかざしてみせた。
酷薄そうな唇にはうっすらと底意地の悪い笑みが漂い、切れ長の鋭い瞳はある種の熱を孕んで挑むようにライアスを射すくめている。
蒼炎(そうえん)のようなその瞳に燃えているのは、激しい憎悪だった。
「…………」
返すべき言葉を持たず、ライアスは長い睫を伏せた。
(覚悟はできております。存分になさってくださいませ)
胸の中でつぶやいた言葉は、偽らざる彼の本心だった。
そんな殊勝な台詞さえ、しかし自分に言う資格はないと、ライアスは思っていた。
それに、帝王もそんな応えを望んではいない。
この不遜な若き王は、ライアスに屈辱を与え、怯えさせたいだけなのだ。
自分の本心を言えばかえって相手を不愉快にさせると思い、ライアスは黙っていた。
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