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「どうした?怯えて口もきけぬか?」
帝王の顔に、ようやく満足気な表情が浮かんだ。
その瞳の中に燃える憎悪の炎を……さらにその奥に潜む言い知れぬ哀しみを、ライアスは見るに忍びず、無言で目を伏せた。
帝王は、綺麗な少年を愛(め)でる趣味があると聞く。
だが、自分がこの城に召されたのが夜伽の相手を務めるためではないことを、むろんライアスは知っていた。
もし、仮にそのようなことがあるとすれば、それはライアスに屈辱を与えるためだけの、拷問の一環に過ぎない。
無意識のうちに、ライアスはきゅっと細い指を握りしめた。
正直、怖い。
これから自分の身に起きることを思うと、抑えがたい怯えが胸に忍び寄ってくる。
(……でも、帝王さまの哀しみに較べたらこれぐらい……!)
けなげな決意を胸の中で新たにして、ライアスはそっと唇を噛みしめた。
ライアス自身が罪を犯したわけではないけれど、やはり自分が罰を受けるのは当然だと思った。
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