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「申しあげます、帝王さまっ!」
両開きの扉が勢いよく開き、背の高い騎士が慌ただしく部屋に駆けこんできた。
「何事だ、騒々しい」
鎖とライアスの髪から手を離し、帝王は不快そうに眉をひそめてふりむいた。
ようやく息ができるようになり、ライアスは長い睫を伏せてぐったりあえいだ。
「第1部隊が全滅しました。いばらの妖精騎士は、かなりの遣い手と見えます」
荒い息をつきながら、伝令の騎士は無念そうに告げた。
「そんな……!なぜ……!?」
騎士の言葉に衝撃を受けて、ライアスは思わず身をよじり、悲痛な声で叫んだ。
(誰も帝王の城に遣わさないでほしいと、あれほど兄上に頼んだのに……!)
蒼白になったライアスに鋭い視線を投げてから、帝王は冷やかな表情で騎士に向き直った。
「慌てるな。手は打ってある。あいつらは斥候に過ぎぬ。最強の妖精騎士団を既に奴の捕獲に向かわせている。帝国の精鋭騎士もまだ大勢控えている。いばらの妖精騎士が捕まるのも時間の問題だ」
帝王の言葉を聞いて、ライアスはますます蒼ざめた。
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