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「帝王さま……お願い……です……!いばらの……妖精騎士には……手を……出さないで……ください……!!」
帝王の方に身をよじり、ライアスは激痛にあえぎながら必死に訴えた。
背中を貫く激痛に息をするのも辛かったが、ライアスはただひたすら、いばらの妖精騎士のことだけを案じていた。
「……僕は……いばらの妖精国に還るつもりなど……ありません……一生かけて……帝王さまに償う……つもりでこの城に……参り……ました……僕のことは……お気の済むように……なさって……ください……ですから、どうか……いばらの妖精騎士のことは……」
激痛のあまり、息が乱れて思うように喋れない。
それが、ひどくもどかしかった。
ともすれば霞みそうになる意識を懸命に励まして、ライアスは必死に帝王の目を見て言いつのった。
そんなライアスを苛立たし気にみつめ、帝王は靴音荒くつかつかと歩み寄ってきた。
傍らの騎士の手から鞭をひったくり、ライアスの胸を2、3度打ち据える。
黒革の鞭が胸に弾けるたびに、ライアスは可憐な顔を歪めてのけぞった。
「あうっ!!あっ……!」
「おまえを見ていると苛々する。おまえはあいつに似過ぎている……」
乱暴に騎士の手に鞭を返して、帝王は苦々しい表情で吐き捨てた。
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