第2章

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「あいつはいつも人のことばかり……自分のことは二の次にして……俺がどんなにあいつを慈しんできたか……!」 わななく拳を握りしめ、帝王は視線を床に落として呻いた。 悲壮なその横顔からやるせのない哀しみがひしひしと伝わってきて、ライアスは胸が締めつけられた。 帝王の哀しみが心に深く染み透って、涙が滲みそうになる。 泣かないように、ライアスは懸命に長い睫をしばたたかせた。 (僕には泣く資格なんてない……!弟君の命を奪ったのは、僕の……) 哀しみに肩を震わせる帝王の打ちひしがれた姿をみつめながら、ライアスはあの日のことを思い出していた………… その日、ライアスはいつものように王宮の一室で兄と談笑していた。 やわらかな乳白色の陽射しが射し込む美しい大理石の部屋で、たわいもないことを言いあいながら、楽しく午後のひとときを過ごしていた。
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