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切れ長の瞳は強い意志の光をたたえてまっすぐ前方に向けられ、迷いのない足取りも明らかに目的地があることを示している。
しかし、先を急ぐ風でもない。
散策を楽しんでいるようには見えないが、あくまで悠然と歩を進めている。
ふいに。
「もう嗅ぎつけたか」
低くつぶやいて、少年は足をとめた。
長い睫にけぶった涼し気な瞳に、冷たい闘志がきらめく。
華奢なその立ち姿は、やはりひどく無防備に見えた。
柔らかなブロンドの髪を、一陣の風がなぶって吹き過ぎる。
小鳥のさえずりが響くのどかな森には、少年のほかに人の気配はなかった。
しかし。
美しい唇に冷やかな嘲笑を刻んで、少年は挑発的に言い放った。
「隠れてないで姿を見せろ。俺が怖いのか?帝国の騎士も意外と臆病だな」
すると…………
「綺麗な顔をして生意気なガキだ。我々にそんな口をきいたことを後悔させてやる」
苦笑混じりのダミ声とともに、行く手の木立から大勢の騎士が現れた。
ざっと数えて、4、50人はいるだろうか。
これだけの人数が潜んでいたのに、気配がまるでしなかったのは驚異的だ。
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