第2章

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「我々がアスラン帝国に何をしたというのです?」 静かな口調の中にも強い抗議をこめて、セレオスは恐れ気もなく大国の王をみつめ返した。 眼差しは穏やかだが、一歩も引かぬ表情が白い美貌に滲んでいた。 セレオスは、正義感が強い性格だ。 理由もわからず、いきなり祖国を攻め滅ぼすと宣言されて、黙って引き下がるような男ではなかった。 「何をしたかだと?」 嘲るような笑みをふっと唇に刻んで、帝王は憎々し気にセレオスを睨みつけた。 「貴様の従姉が俺の大事な弟を殺した。罪状はそれだけで十分だ」 「ジョアンヌがっ!?嘘だっ、そんな……!」 恐怖も忘れ、ライアスは思わず叫んだ。 ライアスたちの唯一の従姉ジョアンヌは、内気でおとなしく、心優しい娘だ。 人殺しができるような女性じゃない。
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