第2章

23/29
前へ
/236ページ
次へ
「何を言う、ライアス!!そんなことは許さないっ!!」 ライアスの肩をつかんで荒々しく自分の方を向かせ、セレオスは激しい口調で叫んだ。 その指が、肩に食い込んで痛い。 こんなにも取り乱し、激昂した兄を、ライアスは初めて見た。 「僕は大丈夫です、兄上。心配なさらないでください」 しっかり兄の目をみつめ返し、ライアスは静かに言った。 「何が大丈夫なものかっ!自分が何を言ってるのか、わかっているのかっ!?おまえを帝国に差し出したりはしないっ!!命尽きても、おまえを守るために俺は闘うっ!!」 火を吹くような眼差しでライアスを射すくめ、セレオスは激情をぶつけた。 激昂のあまり、公の場であることも忘れ、「私」ではなく「俺」になっていた。 いや、ライアスとふたりきりの時でも、セレオスは自分を「私」と言う。 そのことひとつとってみても、セレオスがいかに取り乱しているかがわかった。 弟を想うあまり、セレオスは我を失っていた。 兄がいかに深く自分を愛しているかを改めて思い知り、ライアスは涙が滲みそうになった。 「兄上」 瞳を潤ませる代わりに、ライアスは小さく微笑した。 「いばらの妖精王国には二百万の民がいます。僕ひとりと引き換えに、二百万人の命を犠牲になさるおつもりですか」
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

716人が本棚に入れています
本棚に追加