第1章

4/15
713人が本棚に入れています
本棚に追加
/236ページ
「いばらの妖精騎士がこれほどの美少年だとはな。生け捕りにしてたっぷり可愛いがってやる」 奇妙な薄ら笑いを浮かべて、帝国の騎士団はザッと少年を取り囲んだ。 剣の柄に手をかけるでもなく、少年は冷やかにそれを眺めている。 その気になれば騎士団に囲まれる前に木の幹に背中をつけることもできたのに、それすらしようとしない。 よほど、己れの腕に自信があるのか。 サワサワと枝葉をそよがせて、薫風が吹き抜けていく。 少年にとって不利なことに、森の中の一本道は馬車が4、5台すれ違えそうなほどの幅があった。 騎士団がいっせいに少年に襲いかかるには、十分な広さだ。 自分がいかに不利な状況かわからぬはずはないのに、少年は相変わらず悠然と落ち着き払っている。 黒い騎士の衣装に漆黒のローブをまとった騎士団が、いっせいに剣の鞘を払った。 木漏れ日を浴びて、無数の刀身がキラキラときらめく。 それを見ても、少年はやはり剣の柄に手をかけようとはしなかった。
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!