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先頭の男が真っ向から剣をふり降ろしざま、少年の脇を駆け抜けた。
常人にはかわし得ない、疾風のような斬撃だった。
残りの騎士たちがぴたりと動きをとめたのは、仲間の一撃が確実に少年を仕留めたと確信したからだろう。
だが…………
一瞬の静寂の後(のち)に、血しぶきをあげて地面に倒れたのは帝国の騎士の方だった。
いつ抜いたのか、少年の手には細身の剣が握られている。
相変わらず涼し気な表情で、可憐な美貌にはわずかの気負いもない。
「馬鹿な……!」
男たちの間から、低い呻き声が漏れる。
深手を負って倒れた仲間はかなりの手練れ、こんなガキにやられるはずはないという無念の思いなのか、少年の鮮やか過ぎる斬撃に驚きを禁じ得なかったのか。
刃が火花を散らす音さえしなかった。
騎士が剣をふり降ろすより速く、少年が彼にひと太刀浴びせたのだ。
とても、人間技とは思えない。
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