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一途な瞳でライアスをみつめたまま、ジェルジュはひどく辛そうな表情でただ唇を震わせていた。
感情が高ぶり過ぎて言葉が出てこない……そんな様子だった。
ジェルジュがあまりにも辛そうに見えたので、ライアスはそっと手を伸ばして、彼の頬にふれた。
ジェルジュが驚いたように、目を見開く。
「……そんな……顔を……しないで……ください……僕は……本当に……帝王さまに……償いたいと……思って……いるんですから……僕は自分の意志で……ここに……いるんですから……今のままで……僕はしあわせです……」
ジェルジュはたまりかねたように、ひしとライアスを抱きしめた。
驚いて目をみはり、ライアスは人形のようにされるがままになっていた。
「自分を犠牲にしちゃだめだ。君は優しい子だ。心の清らかな子だ。だが、君の考えは間違っている。このままでいいわけがない。ジュリアードだって、今の状況でしあわせなわけがない」
耳もとで熱くささやくジェルジュの言葉は、誠実な優しさに満ちあふれていた。
温かなぬくもりに包まれて、ズタズタに傷ついた背中も癒されていくような気がした。
でも……………………
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