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キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
複数の斬撃を流れるような所作で受け流し、少年は目にもとまらぬ速さで剣を一閃させた。
「ぐわあっ!」
悲鳴と血しぶきがあがった時にはもう、少年はしなやかに身を翻して左手の騎士にひと太刀浴びせていた。
己れの剣が相手の肩口を深く斬り裂いたのを目の隅にとらえつつ、そのままの勢いを利用してさらにひとり、袈裟掛けに斬り降ろす。
もんどり打って倒れた敵には目もくれず、少年は疾風のように身を躍らせて黒い騎士団の中を駆け抜けながら凄まじい速さで剣を数回閃かせた。
男たちがうろたえ気味に少年に向き直った瞬間、5、6人の騎士が呻きながら地面に倒れた。
血のあふれる腕や脇腹を、それぞれ押さえている。
いずれも深い傷だが、命に別状はないとひと目で知れた。
ほんのまばたきする間に、10人近くの騎士が戦闘不能になって地面に倒れていた。
あまりにも凄絶な少年の剣さばきに、帝国の騎士たちはたじろいだ様子で凍りついた。
涼し気な眼差しを静かに男たちに向けて、少年は剣を正眼にかまえ、端然と佇んでいる。
斬撃などなかったかのように、息ひとつ乱していない。
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