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教卓の前では先生の話がまだ続いている。
先生が「それで……」なんて、いったん言葉を区切ると、ドアの前に立ったままだったわたしに手招きした。
「今日からこのクラスに入ることになった、早乙女美波さんだ」
「やっぱり美波かよ!」
先生のさわやかな声に被さるように、やたらうわずった男子の声が聞こえた。
少し遅れてガターンと椅子が倒れる大きな音が教室の中に響き渡る。
「え?」
驚きで顔を上げると、後ろの方に呆然と立ち上がってる男の子がいた。
ラフにセットしたダークブラウンの髪に、黒のセルフレームのメガネ。
スポーツマンぽいちょっと精悍な顔つきで……。
どっかで見たことあるような気がするけど、誰だっけ?
首を傾げたわたしを見て、その男の子はガクッと大げさに肩を落とした。
「おまえ、その反応はねぇよ……」
「滝沢(たきざわ)は早乙女のことを知ってるみたいだな。……早乙女は、中1まで高千里市にいたんだ。って言っても高千里学園の中ではわからないことばかりだろうし、みんな色々教えてあげるように」
先生の声にまばらに返事があがっていく。
その中に手をひらひら振っている奈央を見つけて、私は思わず手を振り返してしまった。
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