異形の竜狼

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それからまた一週間、二週間と経ち亜月が退院する日がやって来た 平等は数日に一度は病院を抜け出しているらしい。 何が目的なのか誰が聞いても口を固く閉ざし、話す事は無いとの事だ 「どう思う?」 「知らん。 心底どうでもいい」 「またそうやって憎まれ口叩く…」 「これが私なんでな。 今更直そうとも思わん」 「そこは直そうと思おうよ」 あれから私と亜月の関係は進展といった進展はしていなかった。 強いてあげるならば私が見舞いに行くのが日課になったくらいだ それも今日で終わる…奴の話題が挙がるのも今日で最後だろう 「しかしまあ、今日で退院だと思うと寂しい気もするね」 「普通は喜ぶべきだろうが」 「変な云い方かもしれないけど、骨折って良かったかな」 此奴とうとう頭が可笑しくなったのか? 骨折って良かったなど普通の思考じゃないだろう 私がそう考えたのを感じたのか、亜月は膨れっ面をして私を睨んで来た 「どーせ葵の事だからあたしの頭が可笑しくなったーとか思ったんでしょ」 「よく解ったな。 大当たりだ」 「どーして葵はそーゆー捻くれた考え方しか出来ないのかなー!!? あたしだって骨折ったのは痛かったし不便だしもう折りたくないよ!!」 「ならどうして良かったなど抜かす? 普通の奴は骨折って良かったなど云わんぞ」 云うと亜月はそれは……と何やらごにょごにょと呟き始める。 全く聞こえん 「何だ」 「ああもう!葵の朴念仁!! 察してよ!!!」 「悪い、全く察せない」 「だから~…!! あたしが骨折してなかったら葵とここで会う事は無かったでしょ!! こうやって隣で話す事も無かったろうし、だから骨折して良かったって云ったの!!!」 ……此奴はたまにこうやってストレートに物申すから困る。 反応が遅れるというか…どう反応していいのか解らなくなってしまう そして自分で云っておいて恥ずかしくなったのか耳まで赤くして俯いてしまった 「……ならば私は楓にボコボコにされて良かったと返しておく」 「……葵…」 「……お前が私のようでないなら察しろ」 「……へへっ♪」 「気は済みましたか? 病院内ではお静かに」 「「……………………」」 婦長らしき奴に苦言を申され、亜月は恥ずかしく俯くのではなく、しょぼーんと項垂れてしまった
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