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──初めて感じる、何よりも恐ろしい感覚。
こんなにレイスが慌てているのにルナティは怯えもしない。
その威風堂々たるルナティの様子に兵士がますます腹をたてた。
「気に食わないねぇ…もっと怯えろよ?ほら?お前はもう……」
引き金へと指を掛け……そして…
──引いた。
「死ぬんだよぉッ!」
その叫び声と同時に銃声が響く。
銃弾がルナティの脳天へと撃ち込まれる…。
思わず悲鳴をあげ、レイスは目を逸らした…。
「リフレクト」
いつものルナティの声が聞こえる。
だが今は優しい声じゃなく、冷ややかな声であった。
その瞬間、先程銃を放った兵士が吹き飛ぶ。
吹き飛ばされた兵士は、そばの樹木に激突すると、意識をうしなった。
ルナティは一瞬、止めを刺そうとした…が、レイスの前で殺すわけにはいかない。
母親は他の兵士へと視線をずらした。
残りの兵士は唖然としている。
だが咄嗟に、逃げ切れないと悟ったのか、武器を構え、形振り構わず此方へと向かってきた。
ルナティは杖を兵士たちに向ける…
「世界の理を創りし暗黒よ…いまぞ我が杖に宿り、我が身を滅ぼさんとす輩を大地へと結びたまえ…」
ルナティはあり得ない速度でブツブツと何かを言い続けている。
やがて杖の先から黒く小さな球体が飛び出る。
それはあまりに弱々しかった。
「ハハハッ!何だぁ?その弱そうなッ…!?」
それは地面へとぶつかるとパチンと弾けた。
その瞬間、兵士全員が地面へと叩きつけられる。
拘束具も付けられていないのに身動きすらできない。
そればかりか体が地面へメキメキと沈んでゆく。
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