序章

13/16
前へ
/48ページ
次へ
そして、暫くの沈黙が続く。 ルナティはレイスと──愛する息子との、最期になるであろうこの一時を名残惜しんでいた。 いつもしているこの頭を撫でることさえ愛しく、ずっとしていたいと思った。 レイスは気付いているのだろうか。 いつもと撫で方が違うことに。 母親はゆっくりとレイスの目の前にしゃがむと、真っ直ぐ目を見てこう言った。 「…レイス。母さん、この戦争終わらせてくるね。」 レイスはそれを聞くと、母親の服を乱暴に掴み、泣き叫んだ。 「やめてよ!母さん一人でなんて絶対、絶対に無理だよ!!!確かに母さんは強いよ!けれど、こんな大陸全土を揺るがす程の戦争なんて、母さんだけで終らせられる訳が──」 ルナティはレイスの言葉を遮るようにこう言った。 「母さん、『化け物』なんだ。自分の生まれた故郷の村を…国の半分を…魔法で消してしまったの。跡形もなく。」 レイスは絶句した。 ──こんなに優しい母さんが『化け物』……?国半分を消す程の…? レイスが黙っている間に母親は話を続ける。 「それと…もう1つ。貴方のお父さんは亡くなっているの。ずっと隠していてごめんなさい。でも…貴方を悲しませたくなかったの。だから…」
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加