序章

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ここまで来て、ルナティは自分の異変に気付いた。 ──泣いていた。 涙が頬を濡らしていく。 今まで押さえていた物が込み上げてくる。 まるで堰を切ったように。 カイルの事、レイスの事、たくさんの事が母親の頭に過る。 ──涙が…止まらない。 レイスはその様子を見て思った。 母さんは今まで悲しい思いをしてたんだ、と。 僕に隠してまで我慢してたんだ、と。 レイスはルナティの頭に手を伸ばすと、自分がされているように撫でた。 「うぅうあああぁぁぁあぁぁぁぁああぁぁぁぁぁッ」 それを合図にしたように、母親はレイスの前で声をあげて泣いた。 そしてルナティはレイスを強く抱き締めた。 レイスは母親の匂いを覚えるかのように、深呼吸した。 †††††††††††††† また暫くの時間が経った。 ルナティはもう泣いてはいなかった。 それどころか何か、吹っ切れたように微笑んでいる。 そして自分の首もとを探り、外したそれをレイスの首に回して付けた。 ──ネックレスだ。 「これは貴方のお父さんのものよ。大切にしてあげて。」 そう言うとルナティは立ち上がり、街の方へと歩き始めた。 「待ってよ…母さんっ!!!」
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