2人が本棚に入れています
本棚に追加
ここまで来て、ルナティは自分の異変に気付いた。
──泣いていた。
涙が頬を濡らしていく。
今まで押さえていた物が込み上げてくる。
まるで堰を切ったように。
カイルの事、レイスの事、たくさんの事が母親の頭に過る。
──涙が…止まらない。
レイスはその様子を見て思った。
母さんは今まで悲しい思いをしてたんだ、と。
僕に隠してまで我慢してたんだ、と。
レイスはルナティの頭に手を伸ばすと、自分がされているように撫でた。
「うぅうあああぁぁぁあぁぁぁぁああぁぁぁぁぁッ」
それを合図にしたように、母親はレイスの前で声をあげて泣いた。
そしてルナティはレイスを強く抱き締めた。
レイスは母親の匂いを覚えるかのように、深呼吸した。
††††††††††††††
また暫くの時間が経った。
ルナティはもう泣いてはいなかった。
それどころか何か、吹っ切れたように微笑んでいる。
そして自分の首もとを探り、外したそれをレイスの首に回して付けた。
──ネックレスだ。
「これは貴方のお父さんのものよ。大切にしてあげて。」
そう言うとルナティは立ち上がり、街の方へと歩き始めた。
「待ってよ…母さんっ!!!」
最初のコメントを投稿しよう!