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レイスはそれを追おうとする。
が…目の前に何かがあって近付く事ができない。
一方、ルナティの頭はレイスのことで一杯だった。
──振り返るな。前を向け。振り返ったらそれで終わりだ。
「母さんッ!」
レイスの声がきこえる。
──立ち止まるな。進め。
「まって!!!僕を一人にしないで!」
レイスが見えない壁をドンドンと叩く。
──レイス…!!もうやめて…。母さん戦えなくなっちゃう……。
一度立ち止まってみる。
──私は今何をしているんだろうか。
まだ9才の息子を置き去りにしようとしている。
この時点で私は母親失格かもしれない。
それでも……これが終われば、私がどうにかなってしまっても、レイスだけは…幸せになれるかもしれない。
母親はその『希望』にかけた。
「スリープ。」
母親がそう呟いた。
──レイスのことは街からこの森に逃げた人たちに任せるしかない…。
母親は胃がネジ切れそうな感覚がした。
「母さ…」
グニャリ──と、レイスの視界が眩む。
耐えようのない、猛烈な睡魔が襲いかかってくる。
「なん…だ…これ……」
声にならない。
叫ぶことが出来ない。
「か…あ……さ……」
段々視界が暗くなってゆく。
そして、母親も見えなくなってゆく…
ここでレイスの意識がプツリと途絶えた。
───「ごめんなさい。レイス。」
母親のそんな言葉が聞こえた気がした。
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