第一章 賑やかなある日。

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──鳥の囀りが聞こえる。 黒毛の青年…レイスはうるさそうに寝返りをうつ…。 「う……んぅ…」 あの日から10年の歳月が過ぎた。 俺はとある少女に拾われ、ソイツと暮らしてきた。 少女はあの戦争で親を殺された挙げ句、姉まで拐われたらしい。 拾われた後、俺が目を覚ますと、やはり母さんはいなかった。 ──帰ってこないと、わかっていたはずなのに…。 耐えようのない悲しみがまた込み上げてくる。 「──独りって…こんなに淋しいんだ…」 気がつくと、いつもそこには母さんがいた。 その存在が今は── 「母さん…僕はどうすれば……」 暫く黙った後…気付いたんだ。 ──探せばいいんだ、と。 来るのを待ってもしょうがない。 探そう──たとえ、どんな悲しい事実があったとしても、目を背けない。 あの時、そう決心した。 そして、俺は少女と旅に出た。 ──母さんを探すために、少女は姉を探すために。 現在はその道中な訳だが…… 「ふぁあぁあ……」 大きな欠伸をし、目を醒ます。 寝起きのせいか、身体中の毛に寝癖がついていた。 俺が今いるのはあの森から遠く離れた街、フェルグス。 町が森林に囲まれた街だ。 そこの宿屋に宿泊している。
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