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──俺の分まで食ってるくせにまだ食う気か……。
半ば呆れてルレアを引きずりながら会計を済ませようとする…が。
客の一人が声を上げた。
「やっぱり、黒の狩人だよね…?あの人。」
それは徐々に店内に広がり、やがてどよめきを生んだ。
「確かに…聞いた特徴と似てる…ってか同じじゃ…」
「聞いたことあるぞ…!東の国の紛争地域で魔法部隊を一人で壊滅に追い込んだとか…」
「東の国の魔法部隊って…!?むちゃくちゃ強いって話じゃない!それを一人で!?」
わいわい…がやがや…
レイスから大量の冷や汗が流れ出る。
──やべぇ。バレた。
「おっちゃん…金…置いてくよ!!」
俺は代金をカウンターに置くと、ルレアを脇に抱え、店を飛び出した。
「あ!逃げた!」
「やっぱり本物だわ!サインー!!」
「握手させてー!」
なんで戦った後にサインとか握手求められるんだよ!?
確かに、俺は今の仕事──傭兵業をしているが、ある時、東の国の魔法部隊壊滅を諸国のお偉いさんから依頼され、依頼通り『一人も殺さず』に壊滅させたのである。
その時の戦いっぷりからついた通り名が、『黒の狩人』である。
最近の奴は意味がわからない、と宿へと全速力で向かいながら思った。
──あともう少し…!!
息を切らし宿へと駆け込むと、俺は自分の部屋まで駆け上がり、ルレアをベットへと放り投げる。
「きゃぅっ!……何すんのよ!もう少し大事にしなさいよ!私は女なのよ?もうこれはレイスの尻尾を堪能しまくるしかないわね!」
「……今度な?…はぁ。」
溜め息をつきながら俺は、着替えや物をリュックへと詰め込んでゆく。
「そーいやぁ…ルレアは準備終わったの?」
そう訪ねるとルレアは自慢げに答えた。
「昨日寝る前に終わらせましたよー!バーカっ」
若干腹が立ったが、ここはあえてスルーしよう。
「よし。これで終わったな。ルレア、も少ししたらここ出るか……ら?」
まただ。ルレアが尻尾を凝視している。
「あのー…今…ちょ……っとだけ…」
「ダメ」
即答。
だがルレアは諦めない。
「お願い!少しだけ…」
「だから嫌だって」
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