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狼に良く似た獣人の少年が森の中を嬉しそうに笑みを浮かべ駆けてゆく。
毛色は黒で、頭の毛が癖毛のようにピョコンと立っている。
それがやけに少年っぽさを出していた。
少年が駆けてゆくその先には、母親が──ルナティが木陰に座って、本を読んでいる。
木漏れ日が白い体毛に当たり美しく輝いていた。
少年が息をきらして目の前まで来ると、その手に持つリンゴを笑顔でルナティに見せた。
「リンゴ!僕一人で見つけたんだ!母さんにあげる!」
ルナティは朗らかな笑みを浮かべ、少年の頭を撫ぜる。
「えへへ……」
カイルが亡くなった日から4年…。
この少年──レイスは7才になった。
レイスにはまだ父の事を伝えてはいない。
いつかその事実を受け止めれるようになるまでは、『仕事で帰って来れない』とだけ伝え、教えない様にしていた。
しかし、7才といえばもう自分に整理がついてくる歳だ。
──そろそろ伝えなきゃならないな……。
そうルナティは感じていた。
──事実を知った時、この子はどう感じ、どうなるのか。
「レイス……」
ふと、呼び掛けてみる。
「ん?なぁに?」
とレイスは満面の笑顔で聞き返した。
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