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新入生にとっては入学式から、俺にとっては二年に進級してから、ピッタリ一週間がたった。
まだ少し緊張している様子の新入生と昨年の自分の姿を重ねて、やっと二年生になったことを実感する。
そんな初々しい新入生を上から眺めながら、溜め息を一つ。
「…帰りてぇ」
ほぼ無意識に零れた言葉は、次々と校門をくぐって教室へ向かう生徒たちのざわめきに紛れて消えていった。
ここらで、俺の現在地を明かしておこう。
聞いて驚け、木の上だ。
別にどこぞの主人公みたいに、木から降りられなくなった猫を助けようとして登った訳じゃない。
原因は俺の隣で双眼鏡を持ちながらニヤニヤしている男子生徒にあるのだ。
「…なぁ、いつまでここにいるつもりだ、彰」
俺が名前を呼ぶと、隣の男子生徒―――加瀬彰(カセアキラ)が笑った。
「愚問だな、りょーちゃん。そんなの王道転校生が来るまでに決まってるじゃんか」
王道転校生。
昨日、担任が転校生についての話をしてからと言うもの、彰がまるで口癖のように繰り返す言葉である。
あまりに煩かったために「王道転校生ってなんなんだよ」と聞いてしまったのが運の尽き。
夜通し王道転校生の素晴らしさについて語られたことは記憶に新しい。
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