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彰の目線を辿れば、腕時計をチラチラと眺める副会長が居た。
彰が体育座りを始めた頃からずっと居たのだが、絶対騒ぐだろうなと思って今まで言わなかったのだ。
「ひゃっふぃ副会長様相変わらず美形でありますね今日も黒渕眼鏡が似合っておりまして大変喜ばしいですねフゥゥゥ!!」
先程の俺と同じように一息で喋り切った彰は、収まりきらないテンションを発散するかのように俺の背中を叩く。痛い。
「ちょ…テンション上がりすぎだから。落ち着きなさい」
「いやいやりょーちゃん今から起こるイベントを考えれば落ち着くとか無理だからマジで」
真顔で言い切る彰にちょっとした恐怖を感じると同時に―――
「おおっ、ここが今日から俺が通う高校か!門でかいなー!!」
―――大きな声が響いた。
少しくぐもって聞こえたのは、先程門の外にいる人物が言った通り門が異常に高いせいだと思う。
この声の主が王道転校生なのだろうか。
確認のために隣を向けば、鼻血をダラダラとたらしながら双眼鏡を必死で覗く彰の姿が。
その反応からこいつが例の王道転校生であることを確信し、俺も同じように観察することにした。
耳を澄ませば、何やら焦った様な声が聞こえる。
「これどうやったら開くんだろ…え、もしかして登るのか!?」
どうしてそんな発想が出てくるんだ。
…いや、本当に待て待てそんなことしたら怪我するに決まってるだろ。
呆気に取られて何も言えない俺を余所に、王道転校生は自分の言葉に納得したらしく門を登り始める。
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