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(もう…いるのかな…)
果てしなく続く坂道を休むことなく走る少女は、かなりの汗をかきながらも、その表情はどこか嬉しそうだった。
(……急げ…急げ…)
パタパタと暫く走ると目的地である真っ白い建物が見えてきた。
―森の図書館―
そう書かれた看板をすぎ、図書館の中に入る。
「気持ち~」
外の殺人的な暑さとはうらはらに心地いい風を感じる。
『おや、また来たのかい?』
優しげな声のほうに目を向けると、眼鏡をかけた青年と目があった。
「ここ居心地がいいんです」
『それは良かった。ゆっくりしていってね。』
そう言って微笑むのは館長のヒロさん。30すぎと本人は言ってるけどそう思えないくらい若々しい人だ。
ヒロさんと軽く挨拶をかわし、私はいつもの場所へと急いだ。
図書館の一番奥にその場所はある。自然の風を迎え入れるため開けている大きな窓、ちょうどよく立っている大きな木が柔らかな影をつくる。
・
彼はいつもそこにいた。何処かから拝借してきたであろう椅子に座り、手にはいつも違う本を持って…。
高鳴る鼓動を押さえ、本棚のかげから見る。
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