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「機嫌悪いのはわかっとう。せやけど血は止めさせてくれ」
懇願するように言う幸継はまるっと無視してフェンを見つめる。
「……ガチギレか?」
「これで怒らないと思うほどの浅い付き合いではないでしょうに」
吹き荒れるブリザートに幸継はカタカタと震え、フェンはマジギレかと遠い目になる。
「……ソーデスネ」
「次、同じようなことをしたら僕の持ちうる全てをかけてフェンが医師活動ができないようにしますから、心得ておいて下さいね」
人命救助と言えば聞こえは良いかも知れませんが、患者が希望しないのにも関わらず、意識を失わせた上での医療処置は傷害事件と言っても過言ではありませんよね?と朔は薄っすらと微笑む。
「……ハィ」
「それから、しばらく顔を見せないでくれませんか」
「へ?」
「うっかり殴ってしまうと思うので(訳:うっかり殺してしまうと思うので)」
無表情のまま宣言する朔にフェンは正しく真意を理解したようで口元をヒクヒクと痙攣らせる。
「……アイアイサー」
うっかりで殺されてはたまらないとばかりに敬礼し、すかさず回れ右をして扉の前まで移動する。
「おい、こら!フェン、我が身が可愛いのはようわかるけど、せめて要救助者の止血してからにせぇ!」
幸継がすかさず待ったをかけるがフェンはもう扉の向こう側で、ちょっとだけ顔を覗かせている。
「不要です」
にべもない朔の言葉にフェンはこりゃもうほんまにお手上げやな、と呟きながら腹立たしいことに本当に両手を頭の上に突き上げていた。
空気を読め、と幸継は半眼になるも、フェンは慣れたものでヘラっと笑って丸投げに掛かった。
「……らしいわ。スマンな。ガーゼとテープ持ってくるから、ユキ君後は任せた!」
「おいっ!!」
宣言するや否や遠ざかる気配に流石の幸継もイラッとさせられた。
「あんな同志の縁早う切ってまえ」
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