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*** 妙に早く、不規則なリズムの心電図の音が耳につく。 知らず知らずのうちに自分の心臓もそのリズムと重ねようとしているのか、息が苦しい。 白い白い病室の白いベッドで寝かされている芙蓉の顔も白くて、物言わぬ躯となった撫子の姿と重ね合わせてしまいそうになる自分がいた。 堪らず、握った手に力を入れると微かに握り返してくれることに安堵しながら、朔はエコーを片手に渋い顔の誠を見上げた。 「……どうです?」 「……3点ご報告があります」 「どうぞ」 「拡張型心筋症と思われます」 「……心臓の既往はなかったと記憶していますが?」 「恐らくは、ですが左肩の怪我の炎症が長期化したことによる全身性炎症反応症候群が誘引の可能性があります」 目眩がした。 知らず荒くなる呼吸を抑えるために、俯き、きつくきつく目を伏せる。 「続きを……」 「妊娠しています」 がばっと顔を上げた朔の目には複雑極まりない表情を浮かべた誠の顔が映る。 その目に映る自分の表情も複雑極まりないものだった。 「朔様……子は諦めて下さい」 「え……」 頭では理解していても感情が追いつかないというのはこういうことかとどこか自分を俯瞰で見ている奇妙な感覚のまま続く宣告を聞く。 「ひとりでもきっと負担が大きいのに……芙蓉は双子を妊娠しています」 まだ意識が戻らぬ芙蓉の顔をまじまじと見つめ、その目を腹部へとずらす。 無邪気に。 あまりに無邪気に子どもを芙蓉に求めていた自分が憎くて堪らず、唇の端を噛み締める。 芙蓉の子どもならきっとかわいい。 溺愛する自信しかなかった。 その一方で芙蓉は私の子ということは朔の子ということでもあるのだと諭すように静かに話していたことを思い出しもする。 自分の子どもと言われれば格段に魅力が下がる。 それでも芙蓉の子どもなら間違いなく愛せると思っていたのに。 その子が芙蓉の命を脅かす存在と成り得るのならば、と仄暗い感情が湧き出してくる。 嗚呼、結局は自分の存在が全てを狂わせているのか。 呆然と芙蓉を見つめる朔の姿を見ていられず、誠は静かに退室した。 扉が閉じる音が聞こえると同時に朔は芙蓉の胸元に突っ伏す。 「ごめん……ごめんなさい、芙蓉」 僕が貴女を傍にと頑なに望んだから。
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